人生100年時代と言われる現代、健康寿命を延ばすことは重要なテーマです。しかし、年齢を重ねるにつれて、病気やケガのリスクは高まり、医療機関を受診する機会も増えるかもしれません。そんな時、気になるのが医療費の問題です。医療費が高額になった場合、家計への負担が大きくなることもあります。そこで今回は、医療費が高くなった際に利用できる公的制度についてご紹介します。特に、多くの方が利用する可能性のある「高額療養費制度」と、手続きを簡素化できる「限度額適用認定証」について詳しく解説していきます。
医療費が高額になるケースとは?
まずは、どのような場合に医療費が高額になる可能性があるのかを見ていきましょう。
- 入院した場合: 入院すると、診察料、検査料、手術料、入院費、食事代など、さまざまな費用が発生します。特に、手術や集中治療室での治療が必要になった場合は、医療費が高額になる傾向があります。
- 手術を受けた場合: 手術の内容や入院日数によって、医療費は大きく異なります。高度な手術や先進医療を受けた場合は、さらに高額になることがあります。
- 特定の病気で治療を受けた場合: がん、心臓病、脳卒中などの特定の病気は、治療期間が長くなることがあり、医療費も高額になりやすいです。
- 複数の医療機関を受診した場合: 複数の医療機関を受診したり、同じ病気で複数の診療科を受診したりすると、医療費が積み重なり、高額になることがあります。
- 先進医療を受けた場合: 厚生労働大臣が定める先進医療は、公的医療保険の対象とならないため、全額自己負担となります。そのため、医療費が高額になることがあります。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度は、医療費の家計負担が重くならないように設けられた制度です。 1ヶ月(同じ月の1日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が、定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻されます。
高額療養費制度の仕組み
高額療養費制度は、年齢や所得に応じて自己負担限度額が定められています。自己負担限度額は、70歳未満の方と70歳以上の方で異なり、さらに所得によって細かく区分されています。
例えば、70歳未満の方の場合、所得区分が上位所得者、一般、低所得者の3つに分かれており、それぞれ自己負担限度額が異なります。所得が低いほど、自己負担限度額も低く設定されています。
払い戻しを受けるためには、加入している医療保険(健康保険組合、国民健康保険など)に申請する必要があります。申請方法や必要書類は、加入している医療保険によって異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
自己負担限度額の計算方法(70歳未満の場合)
70歳未満の方の自己負担限度額は、以下の計算式で算出されます。所得区分によって計算式が異なります。
- 区分ア(年収約1160万円以上): 252,600円 + (医療費 – 842,000円) × 1%
- 区分イ(年収約770万円~約1160万円): 167,400円 + (医療費 – 558,000円) × 1%
- 区分ウ(年収約370万円~約770万円): 80,100円 + (医療費 – 267,000円) × 1%
- 区分エ(年収約370万円未満): 57,600円
- 区分オ(住民税非課税者): 35,400円
上記の計算式で算出された金額が、自己負担限度額となります。 医療費が自己負担限度額を超えた場合、その超えた分が払い戻されます。
ただし、高額療養費制度の対象となるのは、保険診療の対象となる医療費のみです。入院時の差額ベッド代や食事代、保険適用外の医療費などは対象外となりますのでご注意ください。
多数回該当とは?
過去12ヶ月間に3回以上、高額療養費の支給を受けている場合、4回目以降は自己負担限度額がさらに引き下げられます。これを「多数回該当」といいます。
多数回該当の場合、自己負担限度額は以下のようになります(70歳未満の場合)。
- 区分ア(年収約1160万円以上): 140,100円
- 区分イ(年収約770万円~約1160万円): 93,000円
- 区分ウ(年収約370万円~約770万円): 44,400円
- 区分エ(年収約370万円未満): 44,400円
- 区分オ(住民税非課税者): 24,600円
多数回該当に該当する場合は、さらに医療費の負担を軽減することができます。
限度額適用認定証とは?
高額療養費制度は、一旦医療費を全額自己負担した後、払い戻しを受ける制度です。しかし、医療費が高額になることが事前に分かっている場合は、「限度額適用認定証」を事前に申請することで、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。
限度額適用認定証のメリット
- 窓口での支払いが自己負担限度額までになる: 高額な医療費を一時的に立て替える必要がなくなるため、経済的な負担を軽減できます。
- 手続きが簡単: 加入している医療保険に申請するだけで、比較的簡単に取得できます。
限度額適用認定証の申請方法
限度額適用認定証は、加入している医療保険(健康保険組合、国民健康保険など)に申請することで取得できます。申請に必要な書類は、加入している医療保険によって異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
一般的には、以下の書類が必要となります。
- 限度額適用認定申請書: 加入している医療保険のホームページからダウンロードできる場合が多いです。
- 被保険者証: 健康保険証のコピーが必要です。
- 本人確認書類: 運転免許証やパスポートなどの本人確認ができる書類が必要です。
申請後、医療保険から限度額適用認定証が交付されます。医療機関を受診する際に、被保険者証と一緒に限度額適用認定証を提示することで、窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。
限度額適用認定証の注意点
- 保険診療のみが対象: 限度額適用認定証は、保険診療の対象となる医療費のみに適用されます。入院時の差額ベッド代や食事代、保険適用外の医療費などは対象外となります。
- 入院・外来でそれぞれ申請が必要な場合がある: 医療保険によっては、入院と外来でそれぞれ限度額適用認定証の申請が必要な場合があります。
- 有効期限がある: 限度額適用認定証には有効期限があります。有効期限が過ぎた場合は、再度申請が必要です。
その他の医療費控除制度
高額療養費制度や限度額適用認定証の他にも、医療費控除という制度があります。これは、1年間の医療費の合計額が一定額を超えた場合に、所得控除を受けることができる制度です。
医療費控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。確定申告の際には、医療費の領収書や明細書が必要となりますので、大切に保管しておきましょう。
医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の対象となる医療費は、以下の通りです。
- 病院や診療所での診察料、治療費
- 薬局で購入した医薬品の費用
- 歯科治療費
- 入院費用
- 介護保険サービス利用料
- 通院のための交通費(公共交通機関に限る)
ただし、美容整形や健康診断など、医療行為とは認められないものは対象外となります。
まとめ
今回は、医療費が高くなった際に利用できる公的制度についてご紹介しました。高額療養費制度や限度額適用認定証、医療費控除などを活用することで、医療費の負担を軽減することができます。これらの制度を理解し、上手に活用することで、安心して医療を受けることができるでしょう。
医療費に関する制度は複雑で分かりにくい部分もありますが、ご自身やご家族の状況に合わせて、最適な制度を選択することが大切です。ご不明な点がある場合は、加入している医療保険や税務署などに相談してみることをおすすめします。
健康な毎日を送るために、これらの制度を賢く活用しましょう。

